東京北部ユニオン・アミーユ支部
「Sアミーユ川崎幸町」の元職員が、『入居者3人を転落死させたと自供した』と連日報道されているが、これによって一連の事件・事故の会社の責任を曖昧にさせてはならない。一切の責任は会社にあることを今一度はっきりさせて、東京北部ユニオン・アミーユ支部(以下組合という)は、労働者の命と生活を守り、安全な職場を作るために会社と徹底的に闘うことを宣言する。
●極限的な人員削減=合理化こそ、事件・事故の最大の原因だ!
今回の事態であらためて明らかとなったことは、Sアミーユ川崎幸町において、6階・80室を夜間帯わずか3人で見守りをしていたという事実だ。数フロアを1人で見回り見守らなければならないという極限的人員体制のなかで、一連の事故・事件は発生した。
これは、他のアミーユ施設においてもまったく同様だ。しかし、会社は人員増員要求には一切応じようとしない。アミーユ光が丘では夜間帯は2つのフロアを1人で見なければならず、実際に事故が多発している。組合は、「これでは安全を守れない。増員しろ!」と結成当初から要求し続けているが、昨年9月にSアミーユ川崎幸町での一連の事故が報道された以降も会社は一切応じようとせず、「配置基準を満たしている」というばかりである。会社の体質は一切変わっていない。一連の事件・事故の一切の責任は会社にある。
●「夜間、各フロアに職員が常駐している必要はない」――労働者に一切の犠牲を押し付ける宣言!
組合は、アミーユ光が丘において、1月25日の夜間帯に、1階の同じ利用者が、2回もべッドから転落するという事故がおきたことに関して、「夜間帯 1 名を増員し、各階に職員を配置すること」を要求する緊急申し入れ書を提出した(2月2日)。「以前から組合が『手薄な体制』について指摘しているにも関わらず、夜間に1階と4階を職員一人で対応させるあり方を会社は見直さず、入居者・職員の安全について考慮していない。事故のみならず、夜勤帯長時間両フロアを対応することは、職員にとって負担が大き過ぎ、施設としての責任を放棄している。」と指摘した。
ところが会社は、「夜間帯、各階に1名、職員を配置すること」という当然の、ささやかな、最低限の要求に対しても、「今回の事故は一過性の体調変化による転倒事故である為、事故防止の為の職員の増員が必要とは考えられません」「現状手薄な人員配置とは考えていない為、夜間帯一名を増員し配置することは予定しておりません」「事故防止の為に、必ずしも各フロアに職員が常駐している必要はありません」と回答してきた(2月15日付回答書)。
さらに回答書では、「そもそも、各フロアに職員が常駐していたとしても、突発的な居室で発生する事故は防ぐことができません。…施設としての責任を放棄しているとの貴組合の主張に根拠はありません」とまで言い放った。
現場職員は日々命を削って安全を守るために必死に働いているのに、会社は「各フロアに職員が常駐していても、事故は防げない」とどうして言い切れるのか? 「Sアミーユ川崎幸町」で逮捕された職員も、とりわけ夜勤帯の極限的状況に触れているではないか。アミーユの非人間的な夜勤労働の実態は、もはや社会的問題として認識され、その改善が求められているではないか。会社は9月の一連の事故報道後、橋本会長名で「各職員の皆さんが、日頃負っているストレスを十分に把握せず、現場任せにしていたという、痛烈な反省を感じています」「皆さんが現在感じている問題をアドレスに送ってもらいたいと思います」と書面を出したが、実際にはまったく何もしてこなかった。いやそれどころか、現場に即した職員の声を切り捨てている。
「夜間帯、各階1名の職員の配置を」――これは現場からの、安全を確保するための最低限の訴えであり、叫びである。にもかかわらず、「人員増だけは、絶対に認めるわけにはいかない」と強固に拒否する会社の姿勢こそ、「Sアミーユ川崎幸町」の事態を何ら見つめず、改善もせず、再びこうした痛ましい事件を生み出しても構わないという、会社の本質を露わにしている。
「Sアミーユ川崎幸町」の元職員が逮捕された、まさにその前日に出されたこの回答こそが、「現場の安全崩壊など一切省みず、労働者に一切の犠牲を押し付ける」という会社の宣言そのものである。断じて認めるわけにはいかない!
●「アクシスト」システムが、介護現場を破壊している
さらに、アミーユ施設においては、人員不足だけにとどまらず、「アクシスト」と呼ばれるシステムによって究極の合理化体制が取られ、これが現場職員を極限的な多忙に追い込み、孤立させるものとなっている。
会社は利益を上げるために、限度を超えた合理化・人員削減をおこなってきた。「アクシスト」システムでは、担当フロアーを持たず、職員の動きが分刻みでスケジュール化される一方、そのスケジュールには突発事故やナースコール(NC)に対応する時間が全く考慮されていない。認知症による行動障害や精神疾患高齢者がどのような行動を行うか、などを完全に度外視した「アクシスト」は、職員が休憩、仮眠もとれないような殺人的夜勤を生み出している。
その上に、アミーユでは「アクシスト」によって、施設でありながら職員一人一人が訪問介護のような動き方をしている。自分の仕事をこなすので精一杯で職員同士の協力・協働ができないシステムだ。十分な人員がいて、職員同士が協力・協働できる労働環境を作らなければ、また同じような事件・事故が起きる。
「アクシスト」システムは、極限的な人員削減を実現し、職員を分断・孤立させ、そのことによって会社が暴利をむさぼる事を合理化する、まさに「うちでの小づち」となっているのだ! こんな「アクシスト」システムは、廃止以外にない。
●労働者が「殺人者」とされることを拒否しよう! 労働組合をつくり団結して、労働者の誇りを取り戻そう
「介護現場の崩壊」と言えるこの状況の根本原因は、介護の民営化である2000年の介護保険制度導入によって介護が、企業が儲けるための産業にさせられたことにある。1円でも多く儲けるために、労働者をとことん低賃金で働かせ、できるだけ少ない人員で職場を回させ、金のかかる安全対策はないがしろにされてきた。また、介護の知識や経験がない他業種の資本が儲けるために参入したことも、介護現場を劣悪にした大きな要因である。そして介護保険の導入によって、多くの職場が労働組合のない職場になったことが、会社の「やりたい放題」を許してきた一番の原因だ。安倍政権は介護を成長戦略の柱と位置づけて、さらに大企業が儲けるための産業に変えようとしている。
他産業でも、尼崎事故をはじめとしたJRでの事故多発、先月の軽井沢スキーバス事故など、民営化、外注化、規制緩和によって安全が崩壊し、事故が多発している。
職場の安全は、労働者が団結して労働組合をつくって団結し、勝ち取る以外に絶対に守られない。必死に現場で働く労働者の安全が日々脅かされ、「殺人者」にまでされる状況を、今こそ変えなければならない。
今まで介護労働者は、劣悪な職場環境で、理不尽なことを強いられ、くやしい思いをしてきた。そんな中でも、介護労働者は必死に働き、現場を守ってきた。崩壊する介護現場を、安全で、みんなが誇りをもって働ける職場に変えることができるのは、現場を動かしている労働者だけだ。そしてそれは、労働組合を通じた労働者の団結があればぜったいに可能だ。団結した闘いの中でこそ、私たち介護労働者は、労働者としての誇りを奪い返すことができる。
もう一度、全国のアミーユをはじめすべての介護労働者のみなさんに訴えます。職場の安全は労働者が団結して労働組合を結成して、「安全よりも金儲け」の会社と闘って、勝ち取る以外にありません。労働組合を作って共に闘いましょう。東京北部ユニオン・アミーユ支部、合同一般労働組合全国協議会に加入し、一緒に闘いましょう。
2016年2月22日
合同・一般労働組合全国協議会サイトから転載